がん治療前(婦人科がん以外)
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治療
対象 -
がん治療、あるいは一部の自己免疫疾患に使用される抗がん剤や放射線照射(骨盤を照射野に含む場合)は、卵巣機能を著しく低下させ、治療後無月経になったり、月経が再開したとしても妊娠が難しい状況になることがあります。
抗がん剤の卵巣機能に対する影響は、治療時のご自身の年齢、使用される抗がん剤の種類と量により異なりますが、いまだ不明な点も多いのが現状です。したがって、卵巣機能に影響を与えうるすべての治療を受ける方に対しては妊孕性温存に関する情報提供がされることが望ましいと考えます。なお当院は日本がん・生殖医療学会の認定がん・生殖医療施設(認定番号010)の認定を受けています。
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診療
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妊孕性温存の方法としては、卵子、胚、卵巣組織凍結が挙げられます。
このうち当科では初経開始以降方に適用される卵子、胚凍結を行っています。初経開始前のお子さんが対象となる卵巣組織凍結は当科では行っておりません。凍結した胚を将来使用する際には、融解して胚移植を行います。
凍結卵子の場合には、融解し精子を用いて受精をさせて得られた胚を移植します。したがって、1個あたりの予測される妊娠率は胚の場合15-30%, 卵子の場合10%未満と推測されています。
ただしこの数字はがん患者さんではなく、がんではない一般の不妊患者さんの成績であること、また凍結時の年齢によって成績が異なることに注意が必要です。現在パートナーがいらっしゃらない方には卵子凍結を、いらっしゃる場合には原則として胚凍結を、お勧めしています。
受診時に原疾患の主治医からの紹介状に基づき、妊孕性温存診療が可能な状態かを判断します。
可能で、かつご希望がある場合、原疾患(がんや白血病など)の治療スケジュールを考慮して、卵子を採取する(採卵)の計画を立てます。
通常注射剤の排卵誘発剤を用いた調節卵巣刺激を行い複数個の卵子を採取するように計画します。調節卵巣刺激を開始してから採卵までの期間は最短2週間です。採卵後1週間~10日間ほどは、卵巣過剰刺激症候群を発症するリスクが高いため、採卵が終わってすぐに原疾患の治療を開始できるわけではありません。原疾患の治療スケジュールが許容すれば、複数回の採卵を行うことも可能です。
一方で、実際に卵子や胚を凍結するかどうかの意志決定は、しばしば容易ではありません。当科では、生殖医療コーディネーター(日本生殖医学会が認定する生殖医療専門の看護師です)を交えて相談にのる、などきめ細かなサポートを行っています。
卵子や胚の凍結を行おうと決めている方のみならず、実際に卵子や胚の凍結を受けるかどうかを迷っている、妊孕性温存診療の話をひとまず聞いてみたい、という方もぜひ受診をご検討ください。
受診希望の方は、女性外科 妊孕性温存外来 を受診してください