卵巣腫瘍の種類は、非常に多くのものがあります。
それぞれのタイプによって治療が異なります。
卵巣は骨盤内に存在しているため、卵巣に腫瘍ができても、はじめはほとんど自覚症状がありません。
腫瘍が大きくなると、下腹部にしこりが触れたり、圧迫感があったりすることもあります。性器出血を起こすことは稀ですが、ある種の卵巣腫瘍ではホルモンが作られるようになることがあり、その場合は不正性器出血がみられることがあります。
悪性の卵巣腫瘍では、腫瘍が卵巣内であまり大きくならないうちにお腹の中に転移してしまうため、腹水が貯まってきてお腹が張ってきたり、胸水がたまって息切れがするなど、転移による症状ではじめて異常を自覚することが少なくありません(2/3以上の方は転移した状態ではじめて病院を訪れます)。
婦人科の診察(いわゆる「内診」)や、超音波、CT、MRIなどの画像診断によって、子宮の腫瘍か、卵巣腫瘍か、腫瘍の内部の構造、転移の有無などを詳しく調べます。また、血液中の「腫瘍マーカー」という物質(いろいろな種類があります)を測定することによって、腫瘍が卵巣がんであるかどうかをある程度推測することができます。
ただし、腫瘍マーカーは全例で陽性になるとは限らず、逆に他の病気(子宮内膜症など)でも陽性になることがあるので、卵巣がんの早期発見には必ずしも役立ちません。 確定診断は手術による摘出検体の病理診断によって決定されます。
卵巣がんと診断された場合、がんがどの程度転移しているかの検査が行われます。その結果、がんの拡がりの程度に応じて治療方法が変わってきます。このがんの拡がりの程度を病期といいます。病期は次のように分類されています。

 

I期 がんが卵巣の中だけにとどまっているか、あるいはその他に腹水の中に癌細胞がある状態。
ⅠA期;腫瘍が一側の卵巣にとどまっており、腹水中に悪性細胞がみとめられない
ⅠB期;腫瘍が両側の卵巣に限局し腹水中に悪性細胞がみとめられない
ⅠC期;腫瘍が一側の卵巣または両側の卵巣に限局するが腹水中に悪性細胞をみとめる
II期 がんが卵管、子宮、直腸、膀胱などの骨盤内に転移している状態
ⅡA期;がんの広がりが子宮・卵管・他方の卵巣に及ぶ
ⅡB期;他の骨盤の腹腔内臓器にひろがっている
III期 がんが上腹部にも転移しているか、あるいは後腹膜リンパ節に転移している状態。
ⅢA1期;後腹膜リンパ節転移陽性
ⅢA2期;後腹膜リンパ節転移の有無に関わらず、骨盤外に顕微鏡的播種をみとめる
ⅢB期;後腹膜リンパ節転移の有無に関わらず、最大径2cm以下の腹腔内播種をみとめる
ⅢC期;後腹膜リンパ節転移の有無に関わらず、最大径2cmをこえる腹腔内播種をみとめる
IV期 がんが遠隔転移している状態。
卵巣腫瘍は,良性腫瘍・悪性腫瘍・境界悪性腫瘍(中間群)に分類されます。
画像診断や血液検査からある程度は腫瘍が良性か悪性の推定はできますが、確定診断の為には、手術で腫瘍を摘出して、病理学的検査(顕微鏡による組織の検査)を行うことが必要です。
従って、卵巣腫瘍が疑われる場合には、

①良性か悪性かを診断する
②病変を取り除く

という二つの目的で、手術で腫瘍をとることが第一選択とされています。

悪性腫瘍が疑われる場合
最初に卵巣腫瘍を摘出して,一部分を術中に病理診断に提出します。(迅速病理診断)
それに基づいて手術の術式を決定します。(肉眼的に明らかな悪性腫瘍の場合は,迅速病理診断を省略する場合があります)
子宮全摘術
根本的に治すことを目的とする手術です。子宮本体がなくなるため、再発などの可能性がなく根治します。子宮筋腫の大きさや骨盤内の状況などにより、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援下手術での子宮全摘を行います。
両側付属器切除+単純子宮全摘+大網切除
良性腫瘍の場合や卵巣にとどまっている境界悪性腫瘍の場合は術後の追加治療は必要ありません。術中診断が良性でも最終病理診断で悪性の場合は再手術をおすすめする場合があります。

悪性腫瘍の場合の妊孕性温存手術について
若年のかたで、妊孕性の温存(子宮・片側卵巣の温存)を希望される方に対しては,適応を満たせば妊孕性温存手術を施行します。その場合は、初回手術ではまず片側卵巣、卵管および大網の一部の摘出(場合によってはリンパ節生検及び腹膜生検)を行います。永久病理組織検査(1~2週間かかります)の結果によって方針を決定します。妊孕性温存の適応となるのは、基本的には①組織型が境界悪性腫瘍または高分化型上皮性悪性腫瘍、②臨床進行期Ⅰ期の場合です。